(c) 式の意味する所


 
それには、まず U の原点 Oより 軸に垂直に光を発し、それを S系から観測する事です。

そうすると、その図は 図
247 の様になります。






          
       



 この場合、光の到達点の 座標 は、いかなる時でも Oですから一定となり、教科書の設定と

合致する事になります。


 つまりこういう場合でなら  を時計の位置と見なしても差し支えなくなるのです。

 そしてこういう状態でなら“時間の遅れ論”の元となった 式
(2-4-3)



                              (2-4-3)



は成り立ちます。そこで、次は、この式の意味について考えて見ましょう。


        



 まずは 図 249 に着目して下さい。

 光の発される時を0時、1 を1時、2 を2時とすれば

         の長さは  −0 と同じになり

        2 1  の長さは 1 −0 と同じになります。


ということは (243) の式は


                                            (2-4-4)


で置き換えても同じという事です。

 これは 247 で考えても同じという事になります。



  次は  を書き換えると    になりますので



       




 
これを 247 に当てはめて考えてみましょう。

 その図を 図 2410 とします。

 まづP,P′点の所の角度をθS系に於ける光速を U

の移動速度を
とすれば U 内での光の速度は便宜上(数学

上)
 になります

 そうすると   cosθ ともなるのです



         



 そこで、これを (2-4-4) に戻せば


                        (2-4-5)


となります。

 そこから、これは、図 2411 の中の三角関数を表わしているのだ

という事が判ってきます。 つまり


          


とは、図 2411 の中の三角関数の事だったのです。


 当然  の元の式である


           


もまた 図 2411 の三角関数の式という事になります。

 つまり「時間の遅れ」論の元となった式は、本当は、図 2411 の中の三角関数を表わしていたわけ

です。



 「ちょっと待て、それなら『動いている系の時間は静止系に比べて遅れる』という理屈も成り立つ

ではないか」と言われそうですが、そうは行きません。


 なぜなら、この式は 軸に垂直に発された光のみで考えられているからです。

 他の方向の光は一切考慮されていません。他の方向の光で考えたなら、この式は成り立ちません。


 次に立場を変えて、S系の原点 Oより 軸に垂直に発された光を

基準にして考えて見ましょう。

そうすると、図 2412 より式は


                       (2-4-6)


となり、全く正反対の結果が生じてしまいます。


 この場合、U の方が S系 より時間が進む事になるのです。


  そして、第三に系の進行方向と逆向きに光を発すれば

2413 の様に  となりまして、U の時間

の方が確実に
S系 より進む事になります。

というわけで「時間の遅れ」論の理屈は成り立ちません


 尚、図だけの説明では承服しかねるという方の為に、教

科書と同じやり方で、正反対の結果を導き出し、この理論

が誤りである事も証明しておきましょう。


(d) 逆も成り立つ



      



  と、この様になります。

 こういう導き方では、やり方次第で、どっちの結果でも得られるのです。

 従って「動いている系の時間は遅れる」という理論も誤りとなります。


 尚、私が《動いている系での光の速度》を便宜上  とした事は、ここでは深く考えないで下さ

い。これは次章の「アインシュタインの論文批判」や第四章の「四次元時空」の所でも出て来ますから。


 そして、その時、意味がはっきりして来ます。


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